前回のブログでもご紹介した金沢21世紀美術館。SANAAが手掛けた世界的にも指折りの美術館ですが、数年ぶりに訪れてその人気度を改めて実感したしだいです。
その日は残念ながらゆっくりと観覧する時間もなく、無料展示エリア内を足早に回っただけですが、「えっ、これ無料で見れるの?」と驚くほどの作品ばかりでしたので、その一部をご紹介します。
まずは名和晃平の「FOAM」。
広々とした空間で、青い照明に浮かび上がり、数メートルの高さまで立ち上がる巨大な物体。
それはまるで雲のように、つねに形を変えながら動き、成長しているかのよう。
じつはこれ、すべて泡。巨大な泡の作品になっています。
日常生活でもよく目にする泡。よく泡を観察すると、小さな無数の気泡のようなものが集まり、時には形を変えながら増殖し続け、最後は消滅してしまいます。その一連の過程はまるで細胞のようでもあり、目の前で数メートルと巨大に増殖したそれは、見る人を圧倒します。作品に関する詳細はコチラ。
次は横山奈美「LOVEと私のメモリーズ」。
日常、よく目にしたり耳にする「LOVE」という言葉。簡単に使える言葉である反面、現実にある様々な愛は複雑で難解、そして時には裏があったり。
これらの作品ではネオン管を使い、「LOVE」のフレーズや描写が表現されていますが、よく見るとその後ろに張り巡らされた配管や支柱までもが露わになっています。
愛の理想と現実のギャップを諭すかのような、考えさせられる作品です。この作品についての詳細はコチラ。
佐藤浩一の「第三風景」ではイチジクに着目した作品が印象的でした。
イチジクはの旧約聖書のアダムとイブに登場したり、民族神話では不妊治療に用いられたりと、生殖や性のシンボルとして描かれた歴史があります。
と同時に紀元前から栽培作物として人間の長い営みに関わってきたわけですが、現代ではより良質を求め、あるいは商品価値を高めるために品種改良が繰り返されています。
とくに日本では人工授粉はおろか、受粉せずともイチジクができるほど技術が進んでいます。
しかし、視点を変えると古くから生殖のシンボルとされてきたイチジクが、自らの意思とは関係なく、人間の単なる欲求のために、受粉する機能を奪われているというのも事実。
そんな皮肉めいたイチジクの歴史を知るとともに、人間が求める理想の世界とは、私たちがまるで現代のアダムとイブのように思える印象的な作品です。すでに展示は終了していますが作品のサイトはコチラ。
ご紹介した期間限定の展示作品の他にも無料で観覧できる作品は館内外に数多くあり、気軽に訪れて楽しめるという、なんとも贅沢な美術館です。
金沢に行く機会があれば、絶対にはずせないスポット、金沢21世紀美術館。まだ訪れていない方はぜひ。美術館のイメージが変わりますよ。
公式HPはコチラ。要チェックでございます!
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